睡眠時無呼吸症候群 SAS

睡眠時無呼吸症候群

睡眠時無呼吸症候群睡眠中に呼吸障害を起こす病態を指します。胸、腹の呼吸運動が減ってしまう中枢型と気道の閉塞を繰り返す閉塞型の2種類に分類されています。
覚醒しているときには障害がなく、睡眠により呼吸障害が誘発されます。
睡眠に呼吸障害が繰り返されると、体内の酸素が不足するために心拍数が上がり、体を休める状態になりません。低酸素状態を察知した脳が覚醒反応を起こして呼吸を再開させています。脳も休むことができず、昼間に抗いがたい強い眠気、倦怠感、集中できないなどの症状が現れます。

睡眠時無呼吸症候群のおもな症状

寝ている間のおもな症状

症状大きないびきをかくのが特徴です。いびきは突然止まり、しばらくして再開します。その間、呼吸が止まっています。呼吸が乱れて苦しそうにしたり、むせたりします。寝汗をかいて何度も目が覚めることがあります。本人に呼吸が止まっている自覚はほとんどありません。

起きたときの症状

症状目覚めが悪く、すっきり起きることができません。熟睡感がなく、目覚めた時から体が重く疲労感を感じたりします。睡眠中は口呼吸になっているため口からのどの不快感が現れます。頭痛も高頻度で併発します。

日中の症状

症状常に眠気を感じます。会議中、運転中などに引き込まれるような強い眠気を感じ、気を失って落ちるように眠ってしまうことがあります。一日中だるさを感じ、また、集中力や記憶力が欠如した状態が続きます。寝ている間にも疲労回復ができていませんので、慢性の疲労感に悩まされます。

睡眠時無呼吸症候群の原因

閉塞性睡眠時無呼吸

睡眠中に上気道が狭くなったり塞がれたりして換気障害が生じます。睡眠時無呼吸症候群の9割を占めます。上気道の閉塞は睡眠により姿勢の制御が乱れるためです。症状の悪化に影響を及ぼす因子として、首やのど回りに沈着した脂肪のほか、肥大した扁桃、舌根、口蓋垂、軟口蓋などの上気道周辺の組織をあげることができます。覚醒時には問題なく機能している上気道周囲の構造が睡眠状態で機能的な位置関係を保てなくなり、気道を狭くしたり塞いだりします。下あごが小さく、後退していると気道が塞がりやすくなります。歯並びでも口腔が狭くなることがあります。
女性ホルモンが閉塞性睡眠時無呼吸症候群に影響を与えることが知られていますが、その作用機序は解明されていません。閉経後に睡眠時無呼吸症候群の対応が必要になる方が数多く認められます。

中枢性睡眠時無呼吸

閉塞性睡眠時無呼吸タイプとは違って、胸、腹の呼吸運動が起こらない無呼吸です。上気道が狭くなったり閉塞したりしていないのに、呼吸が休んでしまうのです。何らかの原因で脳からの「呼吸しなさい」という指令が出なくなって無呼吸になります。重症のCSAは心不全との関連が強く指摘されています。慢性化した心不全に起因する一連のメカニズムによって呼吸を調節がうまくいかなくなります。また、極度の精神ストレスによって短期間に中枢性無呼吸が出現することもあります。

睡眠時無呼吸症候群が引き起こす事故

居眠り運転交通事故を引き起こす原因の一つに居眠り運転があります。
居眠り運転をしてしまうのは、睡眠時無呼吸症候群、重労働(睡眠不足)、薬の服用、不規則な生活習慣、運転する時間帯などが考えられます。
居眠り運転、運転中の眠気の原因として睡眠の質から考えられるのが睡眠時無呼吸症候群です。当院では居眠り運転、運転中の眠気で悩まされている患者様の相談をお受けしています。
国土交通省は「運転を業とする者は無呼吸・低呼吸指数が20以上ならばCPAP療法により自ら健康管理を行うべきである。」という通達を発しています。企業別に事業所におけるスクリーニング検査と医療機関による睡眠ポリグラフ検査で対象者を選定している例も多くあります。
航空機の免許更新時には運転中の眠気制御能力をMWT検査で示すことが求められます。
自動車運転免許証の更新でもMWT検査を求められることがあります。MWT検査も当院で実施しています。

睡眠時無呼吸症候群の合併症について

低酸素休むべき睡眠時間に、脳も体も十分に休むことができないのが睡眠時無呼吸症候群です。普段の生活でも疲労が蓄積してくれば体にさまざまな不具合が出てくるように、慢性的な睡眠不足、睡眠の質の低下によって多くの不調、とくに生活習慣病関連の合併症があらわれます。

おもな合併症としては薬剤(治療)抵抗性高血圧(83%)、心不全(51%)、不整脈(49%)、高血圧(37%)、冠動脈疾患(31%)、糖尿病(23%)などが見られます。このように睡眠時無呼吸症候群は高血圧、心臓病、脳卒中、糖尿病という命にかかわるような病気と密接に関連していることがわかってきています。睡眠時無呼吸症候群の症状である間欠的低酸素血症と、睡眠の分断による交感神経の亢進の2つが関与していると考えられています。
間欠的低酸素血症とは、睡眠時無呼吸症候群によって「無呼吸→低酸素→呼吸再開→酸素正常」という状態が繰り返されることです。これによって血管内皮細胞が障害され、体内の炎症が引き起こされると考えられています。また、間欠的低酸素血症は脳のはたらきや認知機能に影響を及ぼすという研究もあります。
睡眠の分断による交感神経の亢進とは、無呼吸状態から呼吸を回復させるために、睡眠時は副交感神経と交替していて優位ではない交感神経が優位になることです。体は寝ているのに、脳だけ覚醒している状態で、睡眠が分断されてしまいます。本来優位ではない交感神経の活性が高まることで呼吸や循環、内分泌機能などの調節機能のバランスが崩れ、ホルモン分泌の異常や体内の炎症が引き起こされると考えられています。

高血圧

おもな合併症の第1位に薬剤(治療)抵抗性高血圧が上がっています。これは薬剤の服用ではなかなか目標値にまで血圧を下げられない高血圧で、睡眠時無呼吸症候群の患者さんに非常に高い割合で合併します。
閉塞性睡眠時無呼吸タイプ(OSA)では無呼吸状態が間欠的に続いて、その度に交感神経が呼吸を再開させるため、交感神経が優位な状態が持続します。睡眠時に交感神経が亢進することで血圧が上がります。

睡眠時無呼吸症候群は二次性高血圧の原因疾患の一つとされています。二次性高血圧とは、別の病気が原因で起こる高血圧で、原因疾患があるために降圧剤が効きにくいのが特徴です。睡眠時無呼吸症候群に伴う高血圧では、睡眠時無呼吸症候群を治療することで高血圧の改善も望めます。

不整脈

不整脈とは心臓の鼓動が不規則になることで、異常に速くなる頻脈、遅くなる徐脈なども含まれます。動悸、息切れ、疲労感を伴う心房細動も不整脈の一つです。心房が十分に収縮できず心不全を引き起こしたり、血栓ができて脳梗塞を引き起こしたりします。
心房細動は睡眠時無呼吸症候群(SAS)と関連があることがわかっていて、非SAS患者と比較すると、SAS患者は2倍、重症SAS患者では4倍も心房細動の発生頻度が高いことが報告されています。

虚血性心疾患

虚血性心疾患とは、冠動脈が狭くなったり詰まったりして心筋に十分な血液が届かなくなる状態で、狭心症や心筋梗塞などが代表的な疾患です。冠動脈に障害を起こす原因が動脈硬化です。睡眠時無呼吸症候群は重症になるほど動脈硬化を進行させることがわかっています。睡眠時無呼吸症候群による間欠的低酸素血症が関与していると考えられています。また、睡眠時無呼吸症候群は血管を詰まらせる血栓をできやすくしたり、冠動脈の痙攣を引き起こしたりすることにも関与しているといわれています。

脳卒中

脳の血管がつまる脳梗塞、血管が破れて出血する脳出血が起きた病態が脳卒中で、脳に損傷を受けて、言語障害や麻痺などの後遺症に悩まされる疾患です。重症の睡眠時無呼吸症候群患者では脳卒中の発症リスクが高くなるといわれています。

糖尿病

睡眠時無呼吸症候群は糖尿病の発症リスクを高めるといわれています。詳細はわかっていませんが、睡眠時無呼吸症候群による間欠的低酸素血症と睡眠の分断による交感神経の亢進が糖代謝の異常に関与するのではないかと考えられています。これらによってインスリン抵抗性が悪化し、糖尿病の発症リスクを高めます。

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